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経営レポート

経営におけるコンピュータ利用 part1

2014年1月27日|コンピュータ

■小さな魚卸商さんの販売管理        
 コンピュータが、企業の経営にとって欠くべからざる存在となって久しいが、今や、小さな企業でも好むと好まざるとにかかわらずコンピュータを利用しないわけにはいかなくなった。小さな企業は、世帯が小さい分だけコンピュータを有効活用して、生産性の向上に結びつける必要があるのである。

 ここで紹介するのは、少人数で経営しておられるある魚卸商さんの販売管理である。

 その魚卸商さんのある中央卸市場に初めて足を踏み入れたとき、真夏の暑気と強烈な市場の臭いがとりわけ印象的だった。セリの現場では、激しく大声を出しておられるに違いないが、我々には柔和に応対してくれる社長さんにちょっぴり一安心。システムには疎いはずであったが、こちらの話を論理的に理解される方で、大いに助かった。顧客とスムーズなコミュニケーションを図ることが、我々システム屋の仕事の第一歩である。

 さて、「販売管理」と一口でいうものの、その内容は業種業態によって千差万別であり、また同じ業種業態であっても、その企業ごとに販売管理の内容が異なるという難しい業務である。商品を売ったときに、その記録を残すという基本部分は同じでも、商品マスタの持ち方、顧客マスタの持ち方、請求書のフォームが企業により異なってくる。市販のパッケージでは、どうしても「帯に短し、たすきに長し」となることが多い。パッケージを購入して、最初は我慢して使用しても、そのうち自社の業務にどうにもしっくり来ないので、結局、お払い箱にされてしまうというケースは多い。

 はたして、この卸商さんの場合も、卸商さん自身のトータルな販売管理ではなくて、特定の顧客のために特化した販売管理システムであった。正確には、『特定顧客向け販売管理及び顧客向け納品データ発行システム』というべきものであった。 その特定顧客とは、ある中堅のスーパーさんであった。このスーパーでは、IBMの大型コンピュータを使用しており、納入業者には、納入に際して、特定のフォーマットの納品伝票と納品データを提出することを義務付けていたのである。もちろん、自社への納入業務をコンピュータ化することにより、仕入れ業務を合理化するのが目的であった。顧客からこういう要請があれば、納入業者はこれに応えざるを得ない。さもなければ、大切な取引先を失ってしまうことになる。

 機能的には単純なシステムであるが、もちろん市販のパッケージでこの要望に沿うものはない。従って、その要請に従って手作りする必要があったが、実装するにおいて二つの問題点があった。一つは納入伝票のフォームは固定形式であり、しかも、数字のデータはOCR-Bフォントで印刷しなければならなかった。そのスーパーでは、納品伝票からOCR(光学読取装置)を介して、仕入れデータを読み込むためである。もう一つは、納品データをIBMフォーマットで所定の形式でフロッピーディスクに出力することであった。通常、パソコンからの出力フォーマットはDOSフォーマットであるために、何らかの変換ソフトを介して、IBMフォーマットで出力する必要があった。一方のデータがあれば、他方のデータは不要だと思ったが、卸商の社長さんも詳しい事情はわからないとのことであった。

 前者の問題を解決するためには、OCR-Bフォントで印刷できるプリンタを探さなければならなかった。しかも、使用するパソコンにつながらなければ、意味がなかった。

 これらの条件を満たすプリンタは、なかなか見つからなかった。当時は、今ほど気軽にインターネットが使える時代ではなく、必要なものを見つけるには足を使うしか方法がなかった。 いろいろ探しても見つからず、駄目かと諦めかけていたとき、あるルートから、そういうプリンタがあるようだという話を聞きつけた。それは、かなり特殊な業務用のプリンタであって、市販のルートにのっていない製品であった。OCR-Bフォントで出力するという需要はそんなに多くなかったのである。

 次の課題は、所定のフォームにぴったり印刷することであったが、フォームを調整できるソフトを探して、これも解決できた。

 また、IBMフォーマットへの出力も、フォーマット変換ソフトを利用することによりこれも解決できた。DOSフォーマットからIBMフォーマットへの変換ソフトは、需要が高いために市販されており、良く知られたソフトが数種類あった。

 これらの課題を何とかクリアして、ようやく卸商さんに納品できたというしだいである。

■最後にエピソードを一つ         
 この時採用したパソコンは、ようやく動作が安定してきたWindows3.1であった。マウスが一般的に使われるようになった初期の頃だ。当然、社長は、マウスを使うのは初体験であった。社長さんに操作してもらうと、目的の場所になかなかマウスカーソルがいかない。あっちへ飛んだりこっちへ飛んだり、なかなか焦点が定まらない。

 ついに、
「こんなの駄目だよ。使えないよ。」と悲鳴を上げられた。
「社長、慣れないと最初は戸惑いますが、すぐに慣れますよ。少し練習すれば、すぐに慣れますよ。どうしても駄目だったら、キータッチだけでできるように作ってありますから、キー入力で操作してください。」
 1週間経って、その卸商さんを訪ねると、
「マウスは便利だね。いやー、使い勝手はいいよ。」とおっしゃってくださった。

 ちなみに、14、5年経った現在(注:平成19年頃)も、このシステムはWindows3.1上で健気に働いているとのこと。このシステムが、この卸商さんの経営にいくばくかの貢献をしたとすれば、システム屋としてこの上ない喜びを感じるのである。

〔会報『人事と労務』 2007年夏号 より〕


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