本文へスキップ

情報バンク株式会社は、WEB・クラウドで給与計算・適性検査・人事考課を効率化します。

経営レポート

経営におけるコンピュータ利用 part2

2014年1月28日|コンピュータ

 企業にとって、社員の処遇は非常に重大な課題である。一人企業は別として、一人でも社員を雇っている企業なら、その社員の仕事に対するやる気が企業の成績を左右するといっても過言ではない。社員のやる気を引き出せなければ、業績は上がらず、場合によっては、それゆえに給料ダウンをせざるをえず、これがさらに社員のやる気を失くすという悪循環に陥ってしまうこともある。

 逆に、適切な処遇を与えて社員のやる気が引き出せれば、業績は伸びていくであろう。こういったことは、今更改めていうまでもないことであるが、ここで紹介するのは、こういった人事管理において、コンピュータを有効活用されているあるメーカーさん(以後、「A社」という)の話である。

■あるメーカーの人事管理システム        
 A社は、社員約200名程度の中堅クラスのメーカーである。他社にはない特殊な製造ノウハウを持っており、その分野において他社の追随を許さず、いたって業績好調な企業であった。

 A社では、人事管理においても、勿論、コンピュータは使用していたが、人事関連のコンピュータ利用は、基幹業務システムに比べて、片隅に追いやられている観があった。A社の人事部長の悩みはこうであった。

(1)毎月の給与計算は大型コンピュータで行い、昇格昇給・賞与の査定シミュレーションはパソコンで行っているが、両者間のデータの連携はオンラインではなくて、フロッピーで行なっている。このため、データの交換が煩雑であり、しかも、大型コンピュータが、システム部の管理の為に、人事部が自分の業務の為に気軽にコンピュータを使うことができない。

(2)昇格昇給・賞与の査定シミュレーションは、市販のパッケージ3種類を使い分けて行なっているが、非常に面倒くさい上に難しい。相当に熟練しないと使いこなせるようにならない。しかも、何回もシミュレーションを行なう必要があり、200名分を処理するのに、2?3週間もかかってしまう。

(3)人事評価に関する規定は、一応文書化されているものの、細部については、人事部長の頭の中にのみあり、他の人に共有されていない。従って、査定ルールの透明性、公平性に欠けるところがある。

 従って、人事部長のご要望は以下であった。

(1)給与計算、昇格昇給・賞与査定シミュレーション、その他人事情報の管理は、人事部所属のパソコン上で、人事部が気軽にできるようにしたい。

(2)従来の3種類のパッケージを使い分ける方式ではなくて、一本のソフトでこれらの処理がすべてできるようにしたい。そして、査定シミュレーションに要する期間をもっと短縮したい。

(3)人事評価のルールをパソコンの中に組み込んで、社員の誰でもが納得できるような公平性を実現したい。

(4)経理処理は大型コンピュータで行なっているので、パソコンで行なった給与計算の結果は、大型コンピュータに取り込めるようにしたい。但し、セキュリティの問題を考慮して、パソコンと大型コンピュータとはオンラインでつながずに、フロッピーでデータ交換をする。

 昇格昇給・賞与の査定ルールは、企業ごとに千差万別であるから、当然市販のパッケージでそれをカバーできるものはない。これが為、A社は3種類のパッケージを使い分けて何とか運用してきたのであるが、いかにも煩雑である。パッケージ間の連携はないので、計算の都度、データフォーマットの変換が必要となり、間違いを誘発したり、手間がかかって処理日数も非常にかかるという状況であった。

 人事部長の要請を受けて、給与計算は既存のパッケージを使用し、そのパッケージに組み込む形で、昇格昇給・賞与の査定シミュレーションプログラムを新規開発することになった。

 査定ルールは、文書規定に記述されているとはいえ、詳細については、全て人事部長の頭の中に凝縮されていた。25年間かけて蓄積されてきた人事部長の頭の中を解凍するのはなかなか容易なことではなかった。

 その仕様には、論理的に矛盾している箇所があったり、当然ありうる場合の記述が欠落していたり、また、条件の境界について記述が曖昧であったりとプログラムに組み込む為にはいろいろ不備な点があった。また、時間の経過とともに、仕様の内容が日々変わり、昨日の言が正しいのか、今日の言が正しいのか、判断に迷うこともしばしばあった。

 これまでこういった仕様で一向に支障がなかったのは、査定の処理において、人間の関与する部分が多くて、人間が適当に判断していたからに他ならない。ある意味で、非常に人間臭い処理をしていたことになる。しかし、人間が融通を利かせられると引き換えに、A部長とB部長とでは、処理の結果が異なってしまうことはあった。

 人間は、規定が曖昧でもその場その場の状況に応じて適当に判断して処理ができるが、生真面目なコンピュータは、適当にやるということができない。従って、コンピュータで処理させる為には、査定のルールを洩れなく矛盾なく厳密に記述して教えなければならない。この意味で、コンピュータは、新人と全く同じである。

 しかし、査定ルールの全部が全部厳密に記述できるというわけではない。ある項目についての評価は、ある評価基準によって必ずしも厳密に決定できるとは限らないからである。そこには、どうしても人間の主観的な判断が入り込まざるを得ない。そして、最後の結果を評価するのも人間であり、その結果が思わしくなければ、再度初期の値を変えて、シミュレーションを繰り返すことになる。

 コンピュータ化の意義は、人間の恣意的な判断の入る余地を極力小さくして、誰にも公平に評価していることを示すことにある。

 人事部長とのバトルを繰り返しながら、紆余曲折を経ながらも、漸く完成したソフトは、使い勝手もよく、なかなかの出来映えであった。特に、200人分の査定シミュレーション計算が、2~3分で済むようになり、納得がいくまでシミュレーションを繰り返しても、1日で済むようになった。2~3週間もかかっていた処理がわずか1日で済むようになったのである。コンピュータの面目約如といったところである。

■コンピュータを生かすヒント          
 コンピュータは、これまでの機械とは大いに異なる性格を持った機械であるが、それでも単なる道具に過ぎない。道具は使いこなしてこそ、意味がある。そして、その道具を使いこなすのはあくまでも人間である。勿論、それを使いこなす為には、それなりの知恵とノウハウが必要ではあるが。

 先ほど、コンピュータは、新人と同じといったが、新人でも仕事をしているうちに要領を覚えて、矛盾しているところがあっても適当に判断するようになる。しかし、融通の利かないコンピュータは何年その仕事をしたところで、適当に判断するようには決してならない。人は、経験を積めば学習するが、コンピュータは、経験を積んでも学習することがないからである。

 しかし、コンピュータは、同じ計算を何万回でも、何時間でも計算して飽きることはない上に、決して間違えることはない。一方、人間は、繰り返し何万回も同じことをやることには耐えられないし、繰り返すうちに必ず間違いをおかしてしまうのである。

 ここにコンピュータを生かして使うヒントがあると思われる。

〔会報『人事と労務』 2007年秋号 より〕


WEB・クラウド給与計算、人事考課、適性検査を効率化

情報バンク株式会社

〒460-0002 名古屋市中区丸の内3-17-6 ナカトウ丸の内ビル5階
TEL (052) 990-6699 FAX (052) 962-5577