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2006年秋号(Vol.o31)/03


企業のメンタルヘルス対策

 〔 セントラル社労士法人 寺岡  学 〕



■メンタルヘルス指針          
 厳しい経済社会情勢の下、企業間競争が激化し、産業構造の変化、人事労務管理の変化等により、仕事に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者が急増しました。このような状況の中、平成12年8月に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」が厚生労働省から公示され、心の病を防ぎ、健康な精神状態をつくるメンタルヘルス対策の普及、定着を進めてきました。しかし、近年、仕事による心理的負荷を原因として精神障害を発症し、あるいは自殺したとして労災認定される件数が更に増加するなど、労働者の心身の負担はなお一層拡大している状況が続いています。
 こういった背景から、更なるメンタルヘルス対策の実施強化のために、平成18年3月に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(新指針)が公示されました。内容としては平成12年の旧指針を見直し、企業が取り組む具体的な実施方法が明記されています。
 現在、企業のメンタルヘルス対策は、この新指針を基本として取り組む必要があります。

■企業における現状の問題点       
 新指針は、労働安全衛生法に基づく健康保持増進措置の実施を図ることが目的のため、労働安全衛生法により労働者数が常時50人以上の事業場に選任が義務づけられている産業医は、メンタルヘルス対策においても企業に助言、指導を行う中心的な役割を担う立場にあります。しかしながら、多くの産業医はメンタルヘルスに関して専門外です。また、専門医である精神科医、心療内科医は人数が限られているため、自社の産業医になってもらうこと自体難しいのが現状です。更に、労働者数が常時50人未満の事業場については、産業医の選任そのものが義務づけられていません。
 一方、労働者数が常時50人以上の事業場には衛生管理者、労働者数が常時10人以上50人未満の事業場には衛生推進者もしくは安全衛生推進者の選任が義務づけられており、企業内の産業保健活動の実務を担当することとされています。しかし、衛生管理者、衛生推進者もしくは安全衛生推進者は、他に本務をもちながら活動している場合が大半であり、メンタルヘルス対策に必要な知識・技法に関する教育を受けている者はほとんどいません。
 また、近年のいくつかの調査によると、大企業の労働者と比較して中小企業の労働者は抑うつ度が高く、その中でも特に若年男性の抑うつ度が高いという調査結果が出ています。しかし、中小企業においては産業保健に係る社内体制が弱く、厚生労働省による平成14年労働者健康状況調査から明らかなように、メンタルヘルス対策の取り組みは、大企業と比較してかなり立ち遅れています。

■外部EAPの有効活用         
 メンタルヘルス対策が遅れている企業の一番の理由は、対策の意義や内容に関する知識が不足し、具体的な進め方がわからないからです。
このような企業のために、メンタルヘルス対策を全体的にサポートする外部EAPというサービス機関があります。
 EAPとはEmployee Assistance Programの略称であり、「従業員支援プログラム」などと訳されています。EAPには、企業内に専門の部署を置いて取り組む「内部EAP」と、外部のEAPプロバイダーとの契約によりサービスを導入する「外部EAP」があります。企業からメンタルヘルスに関する業務を委託された外部EAPプロバイダーは、労働者または企業の相談を受けて、評価、診断、助言、カウンセリング等を行うとともに、労働者の教育・啓発を行い、さらに必要に応じて当該労働者を適切な医療機関・相談機関に紹介します。新指針にもこのような専門的な知識を有する外部機関の活用が効果的としています。
 公的な無料の外部機関として、労災病院の勤労者メンタルヘルスセンターや各労働基準監督署内の地域産業保健センター等がありますが、これらの機関はその性格上、個別継続的面談等を含む特定の企業に対する専属的支援や関わりは困難です。こういう理由からも、今後は専門的なサービスを弾力的に提供できる、外部EAPプロバイダーの活用が、更に普及していくことが予想されます。



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