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■はじめに
中小企業におけるマニュアルの必要性は、「人材の教育」と「企業力の永続」にあり、今後、その傾向はますます高まります。
■米国におけるマニュアル化の背景
マニュアル先進国アメリカでは、マニュアルなしでは企業が成り立たちません。その大きな理由は「人材の多様性」と「転職率の高さ」にあります。
「人材の多様性」が理由となる背景には次のようなことがあります。
様々な言語や文化を持った多民族国家、すなわち、多様性の社会では、日本のようなある一定の常識や前例の概念は成立しにくいといえます。
例えば、飲食店の接客という比較的単純な作業でも、従業員個々の仕事に対する考え方ややり方は、多種多様なものとなります。「清潔に」という一言をとっても、異なる文化や価値観をもつ者どうしが共通の認識を持つとは到底考えられません。
そのような状況では、やはり作業の内容や言葉の意味を一つひとつ明確化したマニュアルが必要となります。それにより、初めて一定のサービスや品質、そして『常識』の異なる者どうしの共同作業が可能となります。
次に、「転職率の高さ」の裏には次のような背景があります。
アメリカではだれもが新しいチャレンジを求め、すぐに転職をするのが普通となっています。そのため、企業は絶えずあるリスクを抱えることになります。それは、優れた技術やノウハウという企業の財産、すなわち企業力が、社員の転職とともに失われてしまうということです。
そのため、企業では人材の転職に伴う企業力の消滅と、次に採用した人材への早期の引継ぎのためにマニュアル化が必要とされました。
これは言い換えれば、ある一部の社員の能力に頼らない企業の防衛システムだともいえます。
■日本でも強まる傾向
これら2点の特徴は、近年の日本でも急速に強まっています。
日本人の持つある一定の道徳観や意識は、良くも悪くも多様化しています。また、転職率は、終身雇用の崩壊とその意識の変化により、さらに高まる傾向にあります。それは、日本の企業においても、マニュアル化を進める必要性の高まりを意味します。
■中小企業ほどマニュアル化は不可欠
これら「人材の多様性」と「転職率の高さ」 は、とりわけ中小企業に強くみられます。
中小企業では、人材の確保は中途採用を中心としています。中途採用人材は、家庭環境から学歴、そして過去の職種や職場で築いた『常識』をもち、多様性に富んでいます。例えば、「賞与」「代休」という規則や「顧客」「サービス」「営業」の理念に関わる言葉の個々の『常識』は、まず一致することはありません。
また、中小企業では人材が激しく入れ替わります。従業員20人の会社でも、年に一人二人の退職者は稀ではありません。その人材にかかった採用、教育そして時間は大きな損失となります。それどころか、その人材が企業の要である仕事を担っていたということもあり得る話です。
これらの面でのリスクの高さは、大卒採用と終身雇用の維持された大企業の場合と比較すると、相対的に高いといえます。
■導入マニュアルと業務マニュアルを
このような環境のなか、「人材の教育」と「企業力の永続」のために、中小企業はマニュアル化を進める必要があります。
特に、人材採用時に自社の『常識』を伝える「導入マニュアル」と、本業の生命線である技術や知識をまとめた「業務マニュアル」の作成は早急に手掛ける必要があります。
「見て盗め、体で覚えろ」という、日本の風土や日本人気質に根ざした経営を脱する転換期が、日本、とりわけ中小企業にも訪れて来ています。
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