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個別的労働関係法(労働基準法、労働基準法から派生した労働安全衛生法・労働者災害補償保険法等の労働保護法規、労働契約法理)の適用対象となる「労働者」の範囲は、労働基準法に定義されている。
労働基準法での労働者の定義は次の第9条において定められる。以下に第9条条文及びその解釈を示す。
労働基準法 第9条
「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず(1)、前条の事業又は事務所(2)に使用される者(3)で、賃金を支払われてる者(4)をいう。」
(1)「職業の種類を問わず」とは
肉体労働、精神労働などの区別もなく、その行われる労働の性質を問うこともなく、との意である。そのため、例えば公務員、パートも含まれる。
(2)「前条の事業又は事務所」とは
前条(第8条)において、「この法律は次の各号の一に該当する事業又は事務所について適用する。但し、同居の親族のみを使用する事業若しくは家事使用人については適用しない。一 物の製造、・・・の事業 二 鉱業、・・・ 」とある。
まず、「同居の親族」とは一般的には実質上事業主と利益を一にしていて、事業主と同一の地位にあると認められ、原則として労働者ではない。そのため同居の親族のみを使用する事業は適用除外となっている。但し、親族以外の労働者を使用している事業において、一般事務又は現場作業等に従事している親族(六親等以内の血族、配偶者及び三親等内の姻族)は、次の2条件を満たしていれば労働者として取り扱われる。
@業務を行うにつき、事業の指揮命令に従っていることが明確であること。
A就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もそれに応じて支払われていること。特に、イ 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等及び ロ 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び時期等 について、就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。
また、「家事使用人」とは家事一般に使用される労働者をいう。例えば、法人に雇われその役職員の家庭においてその家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している者は家事使用人であり、個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令のもとに当該家事を行う者は家事使用人に該当しないとされている。
(3)「使用される者」とは
基本的には第8条の事業に使用される者であるか否か、その対償として賃金が支払われるか否かによって判断される。しかし、現実には指揮監督の程度および態様の多様性、報酬の性格の不明確さ等から、この判断が困難な場合がある。
そこで具体的な判断要素としては、
@勤務時間・勤務場所の拘束の程度と有無、
A業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無、
B仕事の依頼に対する諾否の自由の有無、
C機械や器具の所有や負担関係、
D報酬の額や性格、
E専属性の有無
などが挙げられており、これらの要素を総合的に考慮して「労働者」に当たるか否かが判断される。
労働者性が問題となる者の類型としては、従業員兼取締役、裁量性の高い職種や特殊な職種の者、零細下請業者などがあり、雇用形態の多様化により判断が難しいケースが増えている。
そこで厚生労働省からの通達の一部を以下に記す。(基発とは労働省労働基準局長名で発する通達、基収とは労働省労働基準局長が疑義に答えて発する通達をいう。)
▼ 法人、団体、組合等の代表者のように事業主体との関係において使用従属関係にない者は、労働者とならない。(昭23.1.9基発13号)
▼ 法人の取締役、理事、無限責任社員等の地位にある者であっても、法令定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上、業務執行権を有する取締役、理事、代表社員等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対象として賃金を得ている者は、原則として労働者として取り扱う。(昭23.3.17 基発461号)
▼ 生命保険会社と雇用契約により保険契約の募集勧誘に従事する者は、労働者となる。なお、契約形態が複数ある場合等は保険外務員や募集職員等の名称にとらわれず実質上の労働関係の有無により判断される。(昭23.1.9 基発13号)
▼ 組合専従者は、使用者が在職のまま労働提供の義務を免除し、組合事務に専従することを使用者が認める場合には労働基準法上労働関係は存続する。(昭24.6.13 基収1073号)
▼ 共同経営事業の出資者であっても当該法人等との間に使用従属関係があり賃金を受けて働いている者は、労働者となる。(昭23.3.24 基発498号)
▼ 受刑者は労働者に該当しない。(昭23.3.24 基発498号)
その他実際上問題となったもので使用従属関係ありとされたものに、NHKの管弦楽団、合唱団、劇団、効果団の各個人で演出について裁量を一任されている者以外の者(昭24.7.7基収2145号)、特別職の地方公務員として委嘱された鳥獣保護員(昭40.10.13 基収5923号)等がある。逆に使用従属関係が認められなかったものに、市町村の非常勤の消防団員(昭24.1.10 基収3306号、昭33.2.13 基発90号)、競輪の選手(昭25.4.24 基収4080号)、労働委員会の委員(昭25.8.28 基収2414号)等がある。
(4)「賃金を支払われてる者」とは
事業から指揮監督を受けて労働を提供しても、無償の社会奉仕活動を行っている人は労働基準法の適用のある労働者ではない。ここで労働基準法11条には、賃金とは賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうと規定されている。つまり「労働の対償」として、使用者が労働者に支給するものが賃金である。毎月支払われるものだけでなく、賞与や退職金(労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件が明確である場合の退職手当)も該当する。
なお、雇用保険法には労働者の定義に関し規定はされていないが、次の労働組合法第3条の規定と同様と解されている。
労働組合法 第3条
「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」
具体的には、事業主に雇われて、その事業主から支給される賃金で生活をしている者及び事業主に雇われることによって生活をしようとする者で現実に就業していない者も雇用保険上の労働者に該当することになる。
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