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1.はじめに
最近(注記:平成14年頃)、働きすぎやストレスによる過労死が増えてきていますが、過労死を未然に防ぐため、健康診断の再検診や医師による指導に対する「二次健康診断等給付」が労災保険にはあります。
2.会社に義務付けられている健康診断とは
会社は、従業員の健康管理について責任を負っており、労働安全衛生法で義務付けられている健康診断には、大きく分けて次の2つがあります。
@一般健康診断
A特殊健康診断
前者は、仕事の種類にかかわりなく全ての会社が従業員の雇入れ時および雇入れ後の定期に行わなければならないものです。後者は、一定の有害業務を行う会社だけが行えばよいもので、対象となる有害業務は安衛法施行令で掲げられています。
健康診断を実施するにあたって、いくつか注意する点がありますが、ここでは全ての業種に実施義務のある「一般健康診断」について説明します。
3.従業員の健康診断受診義務
健康を管理する責任は、会社だけでなく従業員にも当然あります。労働安全衛生法では、従業員側にも健康診断を受診することを義務付けていますが、会社が指定した医師の診断を希望しない場合は、自ら選択した医師の診断を受け、その結果を証明する書面を提出することができるようになっています。但し、この場合はその費用を会社において負担すべき義務はありません。
また、従業員がプライバシーの保護を理由に健康診断を拒否する場合が考えられますが、法的には会社に従業員の健康管理責任、従業員に受診義務があることを定めていますので、会社に業務命令としての受診命令権限があると考えられています。実際に、健康診断の受診拒否による懲戒処分は有効という判例も出されています。
4.労災で給付する意図
「脳血管疾患」や「虚血性心疾患」は、日常的な長時間労働や職場でのストレスが引き金となって一気に発病したり、症状が悪化するケースが増えてきています。調査によると、過労死は今後も大幅に増えるおそれがあるため、厚生労働省は発病前の予防に労災保険を適用することに踏み切った次第で、仕事によるケガや病気の補償に適用する労災保険で、予防策として給付することは初めてのことです。
5.「二次健康診断等給付」の詳細
この給付は、健康診断の再検診費用(本人負担分)が無料化されるもので、全額給付の対象となるのは、健康診断で肥満、血圧、血糖、血中脂質の4項目についていずれも「再検診の必要がある」とされた場合です。脳・心臓疾患を発症する危険性は、4項目の異常がそろうと健康な人の35倍になるとの学術研究があり、「死の四重奏」として知られています。
無料の再検診は、全国に2万7千ある労災指定病院が実施します。健康診断の結果に基づき、超音波で血管や心臓を調べるエコー検査や血中脂質検査などを行い、医療費は指定病院が国に請求することになります。
6.過労死対策を健康診断に頼ってよいのか
「二次健康診断等給付」は、過労死を予防しようとする前向きな対策といえますが、給付の対象となる血圧や血糖値の異常は、典型的な生活習慣病です。つまり、精密検査で病気を診断するのではなく、生活習慣を改善することで初めて改善効果が上がるものです。生活習慣の改善には、会社の長時間労働対策や疲労対策の強化、従業員自身の改善への動機が不可欠です。
有効な過労死対策は、会社に安全配慮義務の認識を、従業員に自己保健義務への意識を向上させる以外にはないといえるでしょう。
〔平成14年の会報『人事と労務』の記事より掲載〕
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