|
近年の飲酒運転による悲惨な事故の多発を受けて、飲酒運転に対する社会の意識は厳格化しています。そんな世論の意思を受けて警察による一斉取締りが強化される一方、自治体や民間企業の間では公務員や従業員の厳しい飲酒管理が行われるようになりました。飲酒運転がもたらす結果は重大であり、その原因である飲酒運転を絶対に許さないという姿勢を、組織や企業が見せ始めたといえます。
また、飲酒運転はそれ自体が違法行為です。他者を直接傷つけなくてもそれ自体が刑事罰を伴う紛れもない犯罪です。飲酒運転を容認するような企業はコンプライアンスに問題があると見られても仕方ありません。現在、酒類を扱ったり、自動車に関連する業界はもちろんのこと、その他の多くの企業では、飲酒運転をした従業員に対し厳罰を下せるような体制作りを急速に進めています。
従業員が飲酒運転をした場合の企業の対応としては、飲酒運転に対する懲戒処分等の厳格化を就業規則中で明確にすることです。一般的には就業規則にある服務規律において定めることが考えられます。ここで就業中の飲酒運転と私生活上の飲酒運転をどう服務規律に絡めるかが問題になってきます。
まず、就業中の飲酒運転を禁止する定めですが、就業中については労働者の就業および職場に関する規律として規定を設けることが考えられます。そこで「その他酒気を帯びて就業するなど、従業員としてふさわしくない行為をしないこと」などのようにある程度包括的に定めてもよいですが、就業中の飲酒運転による社会的ダメージは相当大きいと考えれますから、より明確に「就業においては酒酔い運転及び酒気帯び運転をしないこと」とするとなおよいと考えれます。
次に私生活上の飲酒運転を禁止することですが就業中のことではありませんから、就業及び職場に関する規律として直接規定するわけにはいけません。しかし、従業員としての地位・身分に基づく規律として位置づけることは考えられます。最近の傾向としては、従業員の私生活上の飲酒運転であっても企業の信用を損なう恐れが非常に大きいと考え考えられますので、なるべく明確に具体的に定めておく必要があると思われます。そこで、例えば、「飲酒運転その他の行為によって会社の名誉または信用を傷つけてはならない。」などと規程することが考えられます。
飲酒運転を禁止する規定を設けると、企業は違反者に懲戒処分を課すことを考えます。しかし、懲戒処分は就業規則に定めがなければ課すことができません。判例によると、就業規則に定めがない事由による懲戒処分は、懲戒権の濫用として無効と判断されることが示されています。したがって、単に服務規律中に飲酒運転の禁止をする規定を置いただけでは、懲戒処分を課すことはできず、服務規律の規程を懲戒制度と結びつけて規程しておく必要があると考えられます。
このとき特に問題になるのは、従業員が私生活上で飲酒運転をした場合に懲戒処分を課すことができるかということです。判例では私生活上の非行についても使用者の懲戒権が及び得ることを認めています。しかし、直ちに使用者が懲戒権を行使できるというわけではなく懲戒事由とされる非違行為とバランスのとれたものでなければならないと解されています。特に懲戒処分としての解雇は、いわゆる解雇権濫用法理が定着していることから、就業規則中に懲戒解雇事由に該当するからといって、解雇が常に有効とは限りません。
このように飲酒運転に対する企業の対応の厳格化は進んではいますが、飲酒運転を懲戒事由として懲戒処分をすることは可能でありまた必要ではあるが、懲戒事由に該当したからといって直ちに懲戒処分をすることは常に有効というわけではなく、諸事情を総合的に検討して判断されるべきあると考えられます。
【懲戒事由等の規定例】
(懲戒事由)
第○条
1 従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、譴責、減給又は出勤停止とする。
……
……
2 従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。この場合において、行政官庁の認定を受けたときは、労働基準法第20条に規定する予告手当は支給しない。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第○条に定める普通解雇又は減給もしくは出勤停止とすることがある。
(1)……
:
(12) 私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷等によって会社の名誉信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき
(13) その他前各号に準ずる程度の不適切な行為があったとき
(飲酒運転に関する懲戒)
第○条
1 従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、情状(「行為の動機、態様及び結果、故意又は過失の程度、当該従業員の職務、他の従業員及び社会に与える影響、過去の非違行為の有無、日頃の勤務態度及び事件後の対応等」をいう。以下、同条において同じ。)により、減給又は出勤停止とすることがある。
(1) 酒酔い運転又は酒気帯び運転で人を死亡させ、又は傷害を負わせた場合
(2) 酒酔い運転又は酒気帯び運転をし、物の損壊に係る交通事故を起こした場合
(3) 改悛の意思なく酒酔い運転又は酒気帯び運転を繰り返した場合
2 従業員が次のいずれかに該当するときは、情状により、減給又は出勤停止とする。
(1) 酒酔い運転又は酒気帯び運転をし、検挙された場合
(2) 酒酔い運転又は酒気帯び運転と知りながら同乗した場合、又は酒酔い運転又は酒気帯び運転になることを知りながら飲酒を勧めた場合
【アルコール処理にかかる時間】
ビール (アルコール度5% ) 500ml (ロング缶1本)
日本酒 (アルコール度15%) 180ml (1合)
ウイスキー (アルコール度43% ) 60ml (ダブル1杯)
ワイン (アルコール度12% ) 200ml (小グラス2杯)
チューハイ (アルコール度7% ) 350ml (標準缶1本)
焼酎 (アルコール度25% ) 100ml (コップ半杯)
↓
これを人間の体が処理するには、体重40kgの人で5時間、体重50kgの人で4時間、体重60kgの人で3時間20分かかります。したがって、体重50キロの人が翌日8時に車を乗るなら、8時間前の前日の12時までにビールならロング缶2本までに抑える必要があるということです。・・・ご用心、ご用心。
|
|